ベンダー RYOURAN

陽だまりの分かれ道

説明

坂道の途中にある小さな公園。
春の風がふわりと吹いて、ベンチのそばに咲いた菜の花が、まるで耳打ちするように揺れていた。

「ここ、昔よく来てたよね」

そう言って笑ったのは真央(まお)。
明るいピンクのスカートの裾が風にふわっと眺めたび、描かれた小花たちが踊るように揺れる。

「うん、学校帰りにアイス食べながらさ。よくくだらない話してたよね」
と、遥(はるか)が笑い返す。 二人の声は、午後の光に溶けていく。

風の音、鳥の声、遠くで子どもが笑う声。すべてが穏やかで、すべてが少しだけ切らない。

「来週、引っ越すんだってね」
「うん、いよいよ」
「早いね、なんか」

「靴、変わってないじゃん」 「履き
やすいんだよ、これ」「ふふ、そういうとこ、あんた変わんないよね」

ただ風が強くなって、真央の髪が頬にかかる。遥が指でそっとそれを先を追った。

「ねぇ、遥。今、どんな気持ち?」

「何でもってうーん」

「ちょっと怖いけど、楽しみ。知らない場所って、不安もあるけど…新しい何かが待ってる
して」

「そういうの、ちゃんと言葉にできるの、すごいね」
「真央が聞いてくれるからじゃない?」

真央は少し黙ったあと、ふっと
笑っ

風がまた吹いて、二人の間に小さな沈黙が生まれた。
でもその沈黙は、居心地の悪いものじゃない。

「ねえ、覚えてる? 中のとき、制服のスカートに絵の具こぼして泣いてた私に、あんたが花の絵、描いてくれた
こと

真央のスカートがまた揺れて、小さな花々がさざめていた。
それはまるで、二人の思い出がそこに咲いているようだった。

「遠くに行っても、ちゃんと笑ってってよ」
「うん。真央も」
「たまには、あの絵の具で描いた花の話、していいよ。自慢していいから」
「じゃあ、世界にひとつだけのアートスカート』って言ってく」

二人は声を上げて笑った。
その声もまた、春の空気に溶けて、小さな陽だまりの粒になった。

 

帰り道、真央はベンチにひとり残った。

ふと、風に舞って足元に落ちた花びらを拾い上げた。
優しいピンクの中に、白と橙があった。

その花びらを、小さなノートに挟む。

「また、ここでできる会よね」
小さくつぶやいた声は、花のささやきのように優しく空に消えていた。

通常価格 ¥10,000 販売価格 ¥10,000
税込み。 
Size XS
在庫あり: 9999

Highlight your values, products, or services

Highlight your values, products, or services

Highlight your values, products, or services

Highlight your values, products, or services

page-banner_03.jpg

Collapsible content

描く、という対話から始まる物語
RYOURANの模様は、すべて手描きで生まれます。
紙の上に筆を走らせる時間は、自然や記憶、心の中の風景と静かに向き合う時間。
こうして生まれた色と柄は、誰かの毎日にそっと寄り添い、心をあたためる存在になっていきます。
手で描くこと。それは人と布をつなぐ、静かな対話です。


模様に宿る文化を、暮らしの中へ
色や柄には、その土地の空気や人々の暮らしが織り込まれています。
RYOURANはテキスタイルを通して、顔の見える物語を届けたいと考えています。
ただの“商品”ではなく、誰かの感性や文化とつながる一着。
それを知ったとき、着ること、持つことへの意識が少しずつ変わり始めます。

やさしく、永く、大切にまとう
衣類を丁寧に扱うことは、地球へのやさしさでもあります。
必要なときだけ洗い、手入れをしながら長く着ること。
それは、水やエネルギーの消費を抑え、自然環境を守る小さな選択です。
服と向き合う時間が増えるほどに、暮らしもまた美しく整っていきます。