ブレイクライン
「なぁ、いつか爆発すると思ってたんだよ」
そう言った陽斗(はると)の声は、笑っているのにどこか鋭かった。
真理子はフードを深くかぶったまま、アスファルトの隙間から噴き出す蒸気を見ていた
夕方の高架下。
赤と黄色のテールランプが、暗闇の中でぐにゃりと歪む。街は忙しそうに燃えていた。
「それって、私のこと?」
真理子は乾いた声で返す。
「いや、俺たち」
陽斗の声が少しだけ熱を帯びた。
「ぶつかるたびに、火花が散って、でもなんか、やめられなくてさ。たぶんお互い、火の起こし方が似てるんだよ」
真理子は一瞬だけ笑いそうになった。
こんなにうるさくて、めんどうくさくて、火薬みたいな会話をするのは陽斗くらいだった。
2人は昔から、何かとぶつかっていた。
意見も、価値観も、歩くテンポも、見ている景色すら違っていた。
それでもなぜか、ある瞬間だけ、呼吸がぴたりと揃うことがあった。
感情が先に跳ねて、思考がそのあとを追いかける。
言葉じゃなく、勢いでしか通じ合えないような
——そんな“火がつく一瞬”だけが、ふたりを並ばせていた。
「お前さ、昔言ったよな」
陽斗が視線を向けずに言う。
「“誰よりも速く走りたいんじゃなくて、走ったあとに自分の跡が地面に残ってる感覚。それが好きなんだ”って」
真理子は、少しだけ目を細めた。
「そんなこと…言ったっけ」
「言った。しかも、やけに真顔で」
彼女は思わず笑いそうになった。
けれど、胸のどこかがじわりと熱を帯びる。
「…うん、今でもそうかも」
「なら、いい」
陽斗はそう言って、手のひらをそっと差し出した。
「なにそれ」
「ぶつかっても残るものって、きっと悪くないんだよ。火花が散ったあとの熱で、風が起きるかもしれないだろ?」
「…かっこつけすぎ」
そう言いながら、真理子はゆっくりと手を伸ばした。
その瞬間、指先から微かな電気が走るような気がした。
まるで色と色とが混ざり合って、黒い紙の上で何かが始まる前触れのように。
——かつてはぶつかることでしか近づけなかった。
でも今は、ぶつかる熱を使って、同じ方向に走り出せる気がした。
真理子は思う。
言葉にできない衝動は、色になる。
まっすぐじゃなくていい。曲がって、はみ出して、重なって、そして熱を生む。
それがきっと、私たちの「動き方」だ。
信号が黄色に変わる。
彼らは走り出した。
影が伸び、風が駆け抜け、都市の雑音が渦を巻く中で、
真理子の足元から確かに「何か」が立ち上がった。
——それは、ただの風じゃない。
感情がぶつかり、焦げたような熱を残す、自分だけの軌跡だった。
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描く、という対話から始まる物語
RYOURANの模様は、すべて手描きで生まれます。
紙の上に筆を走らせる時間は、自然や記憶、心の中の風景と静かに向き合う時間。
こうして生まれた色と柄は、誰かの毎日にそっと寄り添い、心をあたためる存在になっていきます。
手で描くこと。それは人と布をつなぐ、静かな対話です。
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