静かなる決意
列車が山間を抜ける頃、遥は窓の外に目を凝らしていた。
黒く濡れた岩肌に、朝日が差し込み、ところどころに白い筋が走る。
まるで闇を裂いて進むかのような光の軌跡に、思わず息をのむ。
「…見えてきた」
隣に座る妹の紬(つむぎ)が言った。
二人が向かっているのは、かつて祖母が住んでいた山の麓の集落。
今では住人も減り、朽ちかけた家が残るばかりだという。
「ほんとに、あの場所でやるの?」
紬の問いに、遥はうなずく。
「誰かが、忘れたままにしておくのが嫌だった。
でも――ただ懐かしむんじゃなくて、"もう一度始める場所"にしたい」
祖母の家は、想像以上に傷んでいた。
黒ずんだ梁、崩れた壁、ひびの入った窓。
でも、不思議と空気は澄んでいた。
遥は手を伸ばし、壁にそっと白いペンキを走らせる。
それは、かつて祖母が描いていた墨絵をなぞるような行為だった。
「ここに戻ってきたの、ただの気まぐれじゃないんだ」
彼女は、絵を描くことで、祖母が残した“未完成の景色”に向き合っていた。
夜、風が強まった。
木々がざわめく音とともに、黒い空を切り裂くように、流星がひとつ。
「闇は消えない。でも、描く色を変えれば、景色は変わる」
遥は静かに語る。
彼女の服には、岩を思わせる深い黒、風をなぞるような白、そして心の熱のようなブロンズの輝きが踊っている。
それはまるで、自分の内側にあるすべてを肯定するために選ばれた「意志の装い」だった。
数日後、村の人々が一人、また一人と集まった。
崩れかけた家の壁には、色の波がうねりを描いていた。
グレーの筆跡が交差し、白がそれを切り裂き、そしてブロンズがふちどる。
「ここにもう一度、灯りをともしたかったんだ」
遥の言葉に、誰もが頷いた。
私たちは、闇の中を歩いてきた。
でもその中で見た光、感じた風、心に残った熱――
それは、誰にも消せない「私たちの色」だった。
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描く、という対話から始まる物語
RYOURANの模様は、すべて手描きで生まれます。
紙の上に筆を走らせる時間は、自然や記憶、心の中の風景と静かに向き合う時間。
こうして生まれた色と柄は、誰かの毎日にそっと寄り添い、心をあたためる存在になっていきます。
手で描くこと。それは人と布をつなぐ、静かな対話です。
模様に宿る文化を、暮らしの中へ
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RYOURANはテキスタイルを通して、顔の見える物語を届けたいと考えています。
ただの“商品”ではなく、誰かの感性や文化とつながる一着。
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それは、水やエネルギーの消費を抑え、自然環境を守る小さな選択です。
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